いつでも君を待っている（2015年）全10話／BS11では全33話
原題：用九柑仔店
英題：Yong-jiu Grocery Store
おすすめ度：★★★★★★★★ 8/10
BS11で2020年11月から放送が始まり、先日終了しました。台湾では2019年8月16日から10月18日まで週1で放送されていたようで、1話90分×全10話をBS11では30分×33回に編成。鬼のようなCM量でめちゃめちゃ大変だと思ったので、私は録りだめて正月明けに見始めました。飽きるどころか放送に追いついてしまって、最終回までためようか、追いかけようか迷うぐらいハマりました。
昨年私が観賞した台湾ドラマが不作だったこともあり、これも正直どうなんだろうと思って全然期待していませんでした。さらに、登場人物が多そうなのと、過去（主人公の祖父の青春時代）と現代を行ったり来たりすることも、混乱して分からなくなるのではと不安しかなく、見始めるのに躊躇しました。第一に面倒くさそう、疲れそうと勝手な思い込みが先走っていました(笑) 確かにこのドラマ、登場人物が多いのですが、最初に出てくる人たちでほぼほぼ回っていくので、そこを乗り越えればめっちゃ見れます。もっと言うと、台湾ドラマにしては意外と丁寧に作られていて過去のエピソードも結構見やすかったです。あと私の台湾ドラマの不安（苦手）要素の1つがギャーギャーうるさいこと。キンキン声で怒鳴るように口論するのどうしてなのでしょう？私はあのギャンギャンが苦手で、このドラマもそうなのではと不安でしたが、「おんなの幸せマニュアル 俗女養成記」ほどは気にならず。私にとってはそこもポイントでしたね。
この記事タイトル「うっかり涙してしまった件」までを語るのに盛大にネタバレしないといけないので、以下ご注意ください。
まずこのドラマの登場してくる人たちみんなが皆、まあまあ波乱万丈なんですよね。キャストもツッコミどころ満載というか、いろいろ気になります。一人一人コメントしてたら長くなるので、サラサラっといきますね。
主人公：楊俊龍（ジュンロン）
幼い時に両親が事故で他界。祖父に育てられる。
演じているのがデレック・チャン/張軒睿のおかげで、作品自体がなんか安っぽい（←めちゃ失礼）印象になってました。彼には勝手にアイドルっぽいイメージ（というか偏見）みたいのがあるのでどうかなと思いましたが、悪くなかったです。愛くるしい顔をしているので、彼にはほのぼの台湾ドラマに出演してほしいですね。
主人公の祖父：楊進德（ジンダー）
銀月と恋に落ち、駆け落ち。銀月の出産を機に引き離される。
進德の駆け落ち相手：銀月（インユエ）
裕福な家庭で育ち、別の男性と結婚させられそうになるも、進德と駆け落ち。出産時に危険な状態になったことで進德と引き離され、別の男性と再婚させられて渡米。赤ちゃんは亡くなったと思っていた。
ハーフ美女：陳昭君（チャオジュン）
外見が違うことで幼い頃はイジメられる。どうしようもない母親に振り回され、自分の周りの大切な人は自分のせいで不幸になってしまうと思っているため、距離置きがち。
昭君の母：賴玉雲（ユーユン）
クラブで出会った外国人男性と関係を持ち妊娠。堕ろすお金もなく、昭君を出産。貧しいのにギャンブルで借金を作り、返済を娘に頼るどうしようもない母親。恩沛から出切れ金を渡され受け取る。
こちらの女優さんがめちゃ美魔女で気になりました。初めて見た時、リリー・ティエン/田麗さんかと思ったのですが、別人です。娘は娘で混血らしい美人ですが、このお母さんも妙なお色気や、廃れた感なんか含めスゴイ適役持ってきたなと思いました。とにかくグラマラスボディー！
昭君の元恋人：姜恩沛（エンペイ）
昭君が慕っていた牧師の施設で育った孤児。昭君と交際、プロポーズ。結婚するために実家へ行った際、昭君が継父から盗撮されていたことを知って激怒。争っているうちに継父を転落死させてしまったため刑務所へ入り、昭君と破局。実業家として成功した今でも昭君を気に掛けている。
演じているのがロイ・チウ/邱澤なんですが、相変わらずカッコいい。特別出演だったようで、出演時間は長くありませんでしたが、色気だだ洩れちゃっていて俊龍（ジュンロン）が一瞬にして霞んでいました。心の闇が深そうな雰囲気も出ていて、これはこれで良しです。上から斜め45°からだと市原隼人に見える瞬間がありました。
俊龍の親友：簡忠勝（阿忠・アジョン）
学生時代、俊龍が運転する原付で事故に遭い、片足を失う。
ね？みんながみんな、いろいろありすぎじゃありませんか？阿忠の妹・鳳玉（ファンユー）と俊龍と阿忠の親友・蔡兩金（リャンジン）の恋愛模様なんてどーでもよくなるぐらい、イベント満載。上記以外の常連さんたちもそれぞれ濃い人生送っていてネタありすぎ…というか情報の渋滞。解消するのが大変ですが、まぁ飽きずに見続けられます。お店の常連の一人、廟公がロン・シャオホワ/龍劭華という俳優さんですが、この人本当によくドラマ出てますよね～!!!日本に上陸してくるドラマって、それなりに話題作だったりすると思いますが、そーゆー作品の脇役ではたぶん誰よりも出演している気がします。日本で言う大杉漣や柄本明とかのようなまぁまぁ主演と関係してくる脇役でお見かけします。このドラマでも準レギュラーでした。
振り返ると、実力ある俳優さん達が出演していたのかなと思うわけです。
肝心のタイトルに関する件なのですが、最終回ちょっと前に昭君が台北へ去ってしまい、俊龍は「残された人の気持ちは分からないのかなぁ？」みたいなことを言います。これ結構深くて、俊龍は幼い頃おじいちゃんのよろず屋に預けられていて、両親が迎えに来るのを心待ちにしていたのですが、両親はその来る道中で事故に遭い、亡くした過去があります。幼い俊龍は夜中に思い出して泣きわめいたり、引きこもりがちになってしまうのですが、祖父やお店に来るお客さん、友達などと触れ合う中で少しずつ立ち直っていきます。そんなある日、中秋の祝いで父親からサプライズで月餅と手紙が送られてきます。それまで孫・俊龍のために気丈に振る舞っていた祖父でしたが、それを見た祖父は号泣、俊龍は「おじいちゃんの方がもっとつらいんだよね」と優しく声を掛けて抱きしめます。私もこの場面で涙がこぼれました…
個人的な話なのですが、数年前ある芸能人が幼い子供達を残し、若くして病気で亡くなったニュースが世間を騒がせていた際、子供たちが残されて可哀そうだよねと自分の母親に言ったことがあるのですが、母は「子供たちより親が可哀そう。子供たちはなんだかんだ乗り越えていくから。でも親は助けてあげられない、代わってあげられない、自分の子供の死をみることのほうがつらい。」と言っていたのをこのシーンで思い出し、ホロっと泣いてしまいました。
このドラマで起きる出来事は刺激が強めなので、それらを経験したことがある！共感できる！という人はあまりいないと思います。でも、その出来事や巻き込まれた人たちを客観的にみて、誰しも1度は考えたことがある、誰かと話題にしたことがあるのではないかなと。例えば、冒頭の再開発問題とそれに巻き込まれる当事者と家族とかね。自分なりの環境に置き換えて、思い出したり懐かしんだりして、改めて家族や友人など自分の周りにいる人たちの尊さに気付き、愛おしくなるドラマなのではないでしょうか。
ネットにあるみなさんの感想とかを読んでいると「癒された」「どこか懐かしい」の感想が目立ちますが、まさにその通りだと思います。じんわり癒し系人情ドラマとして激しく同意。加えて、田舎の風景が美しくて心が洗われます。上記で鳳玉（ファンユー）と兩金（リャンジン）の恋愛模様なんてどーでもいいって言いましたが、彼らが仲直りする光り輝く畑みたいな風景は美しくて、まさに＂映え＂てました（実際はただの畑で、撮り方が良かったのかもしれないですが…）台湾にも都会＝台北、田舎＝地方という構図があって興味深かったです。このドラマをみている間は、とにかく台湾へ行きたくなりました！あぁまた行きたい！いつになったら行けるかしら…
ちなみにお店の名前が用九商店ですが、毎日の暮らしで使うものが10のうち9揃っているからだそう。用十では欲張りすぎで、用九はこの店が永遠に続いて末永くみんなの役に立てられるようにという願いを込めていると進德（ジンダー）が説明していました。中国語（台湾語）は分かりませんが、漢字のおかげで雰囲気はビシバシ伝わってきますよね！当たり前の日常が日常でなくなってしまった今、このドラマで改めて大切なものを2021年最初に教えてもらいました。笑顔で過ごせることに感謝です。
